10年後の松浦のために。松浦YEGと地域企業がつくるこども場所

「松浦こども博」とは

「松浦こども博」は、松浦市内の会場で年に1回開催される、子ども向けのイベントです。主催するのは、松浦商工会議所青年部(以下、松浦YEG)。20〜45歳の会員21人で企画・運営し、地域の企業や団体と連携しながら、さまざまな職業体験やグルメ体験、働く車体験、ダンスステージなど、子どもたちの「やってみたい」が詰まった一日をつくり上げています。

特徴的なのは、地域の企業が自分たちの仕事や得意分野を生かし、子どもたちに体験を提供していること。企業が地域の子どもたちと直接関わる機会にもなっています。

2016年にスタートし、コロナ禍での中止やオンライン開催を経て、今年で9回目。今では、松浦市内外から毎年およそ3,000人が集まる、地域に根付いたイベントへと発展しています。
12月20日(日)の開催に向けて準備を進める、実行委員長の金井田謙人さんと、松浦YEG会長の山口将仁さんにお話を聞きました。

(左)松浦YEG会長の山口将仁さん(右)実行委員長の金井田謙人さん。どちらも子育て中のパパ。

準備は1年前からスタート

松浦こども博の企画・運営が始動するのは、開催前年の8〜9月ごろ。新しい実行委員長を中心に、松浦YEGのメンバーが地域企業や市役所、地元の高校生などと連携しながら、約1年かけて準備を進めます。
企画内容を考える際には、子どもたちや保護者に事前アンケートを行い、遊びたいことや体験したいことを募ります。寄せられた声をできる限り形にできるよう、協力しながら内容を練っていくそうです。

山口さん「『子どもたちにワクワク楽しんでもらいたい』という軸は大切にしつつ、実行委員長自身の好みや強みが生かされているのも、このイベントの特徴かもしれません。これまでの開催を参考にしながら、大人自身が楽しみ、工夫を重ねるなかで、毎年新たな魅力が生まれているんです」

金井田さん「今年は、小さい子どもから大人まで一緒に楽しめるような音楽イベントを、新たに企画しました。僕自身、学生時代に松浦市文化会館で初めてバンドの生演奏を聴き、その音の迫力に感動した経験があります。今度は自分たちが、子どもたちの心に残る体験を届けたいと思っています」

こうした企画を実現するには、資金面での支えも欠かせません。活動資金は、企業などからの協賛金や、長崎商工会議所、松浦商工会議所からの補助金によってまかなわれています。会場では協賛企業・団体の名前がのぼりなどに掲示され、地域全体が子どもたちのためのイベントを支えていることが伝わります。

素朴なアイデアの種から

松浦こども博は、もともと「みんなでプラモデルを作ったら面白そう」「子どもたちと一緒に大きな画面でゲームをしてみたい」といった、素朴なアイデアから生まれたそうです。

商工会議所青年部の事業として取り組むなかで、会議所に所属する地域企業にも参加を呼びかけ、職業体験などを通じた子どもたちとの交流を取り入れるようになりました。

大工さんによる職業体験

子どもの「やってみたい」体験を、地域企業が形に

これまでには、ドローン操作やプログラミング、管理栄養士・看護師・薬剤師・大工などの職業体験、メイク・ネイル体験、雑貨づくり、発電実験教室など、多彩なプログラムが実施されてきました。

美容師さん、ネイリストさんの職業体験

企業の出展(出店)と聞くと、「子どもにもできる体験を考えるなんて難しそう」「特別な設備や大きな予算が必要なのでは」、と感じるかもしれません。実際に、「大人向けの展示会に出たことはあっても、子ども向けの企画は初めて」という企業が少なくありません。
それでも、「地域の子どもたちのために。10年後の松浦のために」という思いに共感した企業が、それぞれの技術や知識、経験を生かし、子どもたちに楽しんでもらえるよう、工夫を凝らした体験を提供しています。

企業それぞれの強みを生かした企画が集まることで、子どもたちの体験の幅も広がり、イベントをより魅力的なものにしています。

海外出身の技能実習生やALT(外国語指導助手)が母国の料理を提供する「国際食堂」も、継続している人気企画の一つです。食を通じて、子どもたちが地域で働く外国出身の人たちと出会い、異なる文化に触れる機会にもなっています。

また、地元の松浦高校とも連携しており、高校生は来場者として楽しむだけでなく、準備や当日の運営をボランティアとして手伝ったり、自分たちでブースを出展したりと、運営を支える側としても積極的に参加しています。

一日だけで終わらない、日常のつながりに

松浦こども博には、当日の楽しさだけではない意味もある、と山口さんは言います。地域の企業や住民が協力してイベントをつくり上げることは、人と人とのつながりを生み、地域のために何かを始める一歩にもなると考えています。

山口さん「松浦こども博を続けていく背景には、地元の未来に対する危機感もあります。今の地域を、そのまま次の世代に引き継ぐだけでよいのだろうか。10年後、20年後を考えたとき、何も変わらなかったという未来にはしたくないんです。
このイベントでは、松浦YEGのメンバーや企業の方々が子どもたちのために企画を考え、高校生も準備や運営に参加してくれます。一人では難しいことも、仲間が集まれば形にできる。そうした経験を通じて、参加した人たちが『自分たちにも何かできる』と実感できる場にしていきたいです」

金井田さんも、一日の出会いがその後の日常につながることを願っています。
「松浦こども博は一日限りの催しですが、それにとどまらない動きになればと思っています。イベントで『こんな人がいた』『こんな活動や仕事をしている人が身近にいた』と知ることが、その後の日常での、新たな関係づくりにつながると考えています」

新しい興味を見つけたり、普段は接点のない人と知り合ったり。イベントでの体験や出会いは、その日だけの思い出にとどまらず、地域を身近に感じることにもつながります。
松浦こども博が目指しているのは、子どもたちの明日につながるきっかけをつくること。そんな一日の積み重ねが、地域への愛着を育み、これからの松浦を支える力になっていくのかもしれません。

イベントをつくり上げた皆さんと
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