駄菓子屋のある こども食堂

「こども食堂 道の尾」と「まほうの駄菓子屋ペンギン堂」

ここは、長崎市・道の尾にあるビル。週に1回開かれる、楽しそうな名前のこども場所にお邪魔しました。
金曜日の16:30から開かれ、早い時間には小学生が集まり、徐々に学校や部活を終えた中学生、下の階の塾に通う高校生も加わって、大家族のような雰囲気になります。

部屋に入ったら、まずはカプセルマシンを回します。カプセルの中には、このペンギン堂だけで使える「ペングー」というお金が入っていて、それを使って好きな駄菓子を選んで交換したり、おいしいご飯を食べたりすることができます。
お家や学校とは少し違う、ワクワクする時間を過ごしてほしいと、「ペングー」を使った仕組みと、駄菓子屋さんのような雰囲気が用意されています。年齢や家庭の状況にかかわらず、誰でも利用することができます。

このこども場所を運営する山本さん(右)が持っているのが、「ペングー」。これで駄菓子と交換できる。

体験を大切にする こども食堂

こども食堂のメニューは週ごとに決まっていて、この日は自分で具材を好きにトッピングできる「タコライス」の日でした。
子どもたちは食事をするだけでなく、調理や盛り付け、片付け、他の参加者への案内や駄菓子係など、それぞれができることを担当します。ここで台所仕事の基本を覚えたり、お互いに教え合う場面もあるそうです。

小学校低学年の子どもも、コンロの前に立っていました。フライパンのひき肉を色がつくまで炒めます。食べたい量に合う皿を選び、ご飯をよそい、肉や野菜、チーズをトッピング!もりもり食べて、「おいしい」とおかわりをする子もいました。

タコライスは中学生にも人気です。

子どもも大人も、自分らしくいられる居場所

フリースクール「トーキョーコーヒー no.446」もやっています。学校に行かない選択をした子どもたちにとって、ほっとした気持ちで過ごせる、大切な学びと体験の場所になっています。

「トーキョーコーヒー」は、実は「登校拒否」をもじった言葉遊び。この活動は「不登校は子どもの問題ではなく、社会の課題」という考えのもと、大人自身が教育や社会のあり方について考え、対話を生み出し、安心の居場所をつくろう、という取り組みです。この活動に賛同する拠点は現在全国で400カ所以上、長崎県内でも6カ所に広がっています。
(2026年10月現在 トーキョーコーヒー公式サイトより)

この場所でこども食堂、フリースクール、他にも子ども向けの自然体験など、幅広い活動を展開する山本涼太郎さんは、学習塾を営む教育者。妻の直子さんと協力し、塾の業務や子育てと両立しながら運営しています。長年、子どもたちの教育に携わるなかで、こうした居場所の必要性を感じてきたそうです。

山本さん「まずは大人自身が楽しみ、生き生きと活動できること。そんな空間でこそ、子どもは何かを押し付けられることなく、何をして過ごしてもいいと感じられ、安心して自信や意欲を高められる場所になると感じます。こうした考え方に共感して、トーキョーコーヒーの運動にも参加しています」

そのような思いから、金曜日の昼には「子育ち食堂」が開催されています。大人が誰でも自由に交流・活動できる場です。
この「子育ち食堂」と「こども食堂」を合わせると、毎月のべ140名ほどの利用があるそう。この場所を楽しみにしている人の多さがうかがえます。

今、始めなければと思った

山本さん「最近は不登校の相談が増えたり、食事を十分に摂れていない子がいたりと、子どもを取り巻く環境が以前より厳しくなっていることを実感します。安心して過ごせる居場所や、こども食堂の必要性に気付かされました。
またコロナ禍を経て、子どもたちがさまざまな体験ができる機会を奪われたまま、成長していることにも危機感を抱きました。

台所でそれぞれ作業をしながら、大人と何気なく話せる場面も。

子育て中の親の一人としても『準備が完璧でなくても、今始めなければならない』と思い、2024年に塾生や近所の子どもたちと、まずは焼きそばを一緒に作って食べる、ということからスタートしました。そこからお米作り体験、こども食堂、フリースクールへと活動を徐々に肉付けする形で、広がっています。

こども食堂で、調理や片付けなどの体験を大切にしているのも、そのためです。子どもたちは何かをしてもらい『ありがとう』と言う場面は多くても、逆に言われる経験は少ないものです。誰かの役に立って『ありがとう』と言われる体験は、子どもたちの自己肯定感を高める、大切なきっかけになると感じています」

支えてくれる大学生たち

この場所で、心強い支えとなっているのが大学生のボランティアです。

山本さん「学習塾でコーチとして活躍する大学生が手伝ってくれたり、長崎市周辺の7大学の学生が参加できる社会活動支援プログラム『やってみゅーデスク』を通した募集で、毎週2〜3人の大学生がかけつけてくれています。
一緒に遊んだり、料理を作ったり、話し相手になったり。私たちよりも年齢の近い、よきお兄さん・お姉さんが来てくれる日は、子どもたちもとてもうれしそうです」

選べる居場所を、みんなでつくる

山本さん「全国調査によると、長崎県では人口10万人あたりのこども食堂の数が、ここ数年、全国でも最下位クラスという状況が続いています。
(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 2025年度 こども食堂全国調査より)

こども食堂やこども場所があっても、子どもの性格や相性によっては、合わずに利用できないケースもあります。
私たち大人も、居心地の良いカフェや居酒屋さんがそれぞれ違うように、子どもたちも合う・合わないを感じているんです。
地域にこども場所が一つでも増えていくことで、子どもたちの選択肢は広がっていきます」

畳に寝転がって本を読むことも。静かに過ごせる。

大学生に加え、地域の大人のボランティア、同業の方からの寄付、食材や消耗品の提供など、たくさんの人の支えがある一方で、誰もが気軽に来られる場所を続けていくための運営資金の確保は大きな課題です。月に500円から支援に参加してもらえる、サブスクリプションの方法を用意するなど、無理のない仕組みを模索し続けている、と山本さんは話します。

山本さん「それぞれのペースで、無理なくこの場所の未来を一緒に支えていただけたら、とてもありがたいです。 何か支援をしてみたい、こども場所をやってみたいというお気持ちの方は、まずは実際に足を運んで、ぜひ子どもたちと一緒にご飯を食べたり、話し相手をしてみてほしいです。体験をする中で、自分に無理なくできることがきっと見つかると思います」

この日の参加者の一部と、運営の山本さん夫妻。

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