企業が運営する 地域に開かれた場所

こども場所「DS Branch（ディーエスブランチ）

長崎市内にある「DS Branch」は、IT企業が社会貢献活動の一環として運営する、地域開放型スペースです。

月曜から金曜の9時から17時まで、無料で開放されており、Wi-Fiや電源も自由に利用できます。
2022年4月の開設以来、子どもから大人まで、幅広い世代が立ち寄れる「室内の公園」のような場所として親しまれています。

こどもも大人も、みんなで使える

運営するIT企業「DS Brand（ディーエスブランド）」の白濵寿さんに、利用の状況について聞きました。

白濵さん「小学生は放課後に来て宿題をしたり、携帯ゲーム機で友達と遊んだり、友だちの家に集まるようにリラックスして過ごしています。試験期間には、高校生の自習での利用が増えて、席がいっぱいになることもありますよ。

大人の方では、近隣企業の方が昼休みに訪れたり、ご年配の方が買い物帰りにひと休みされたり、ゆっくり読書する方もいらしゃいます。みんなが気軽に立ち寄れる、憩いの場になっているのがうれしいですね。」

テーブル席のほか、靴を脱いでくつろげる階段状のエリア、じゅうたん敷きのスペースもあり、好きな場所を選んで、思い思いの時間を過ごすことができます。

地域のためにという思い

企業が運営し、無料で開放しているこども場所は、県内でもまだ数少ない取り組みです。
また、平日はいつでも利用できるため、地域の人とって「いつでも行ける安心の居場所」となっています。

白濵さん「当社は『持続的成長と社会貢献』を企業理念に掲げています。特に未来の社会を担う子どもたちに関する活動に力を入れていて、子ども食堂への食材提供や寄付、地域での文化イベントなども、積極的に行ってきました。

シニア世代による見守り

常時2人のスタッフが見守りを行うほか、防犯カメラも設置されており、利用者が安心して過ごせる環境づくりが徹底されています。

スタッフの1人である濵口さんは、このスペースを運営するDS Brandの元社員です

濵口さん「社員時代から、会社の地域貢献活動を応援していました。定年後も声を掛けてもらい、このスペースのお手伝いができることはとても幸せです。

大切にしているのは、子どもも大人もみんなが心地よく過ごせる雰囲気づくりです。

例えば、子どもたちの利用マナーについても、『これはダメ』と頭ごなしに言うのではなく、『自分も周りも、こうすると気持ちいいよね』と、一緒に考えられるような伝え方を心がけています。

はじめはできなかった子も、徐々に靴をそろえたり、使った場所を片付けられるようになったり。そんな姿を間近で見られたのは、うれしかったですね。」

地域の大人とつながる

白濵さん「必要以上に干渉せず、そっと見守る姿勢を基本にしていますが、自然にコミュニケーションが生まれる場面もあります。

近所の小学生はいつも同じメンバーで頻繁に来てくれるので、すっかり顔なじみです。町中で会ったとき、『あ、ブランチの人！』と声を掛けてくれた時は、まるで親戚のおじさんのような気分になりました。」

地域の大人に見守られる中で育つ経験は、今の時代に少なくなった「大人とのつながり」の貴重な機会にもなっています。

ワクワクする最新技術のイベント

白濵さん「長崎の子どもたちに最新技術に触れてほしい、未来にワクワクするような体験を届けたいという思いから、年に2回ほど、親子向けのIT体験イベントを開催しています。

生成AIでオリジナルキャラクターを作って動かしたり、VRゴーグルをつけて最新のバーチャル世界を体験したりというプログラムで、東京の企業のサポートを受けて実施しています。

地方ではなかなか体験できない内容で、予約はすぐに満席になる人気です。毎回30組ほどの親子が参加し、子どもも親も一緒に楽しみながら、学べる場になっています。」

これからの「企業×地域づくり」のヒント

DS Branchは、企業が収益の一部を地域に役立てたいという思いから、無料で開放しているこども場所です。運営は企業の社会貢献の気持ちに支えられています。

白濵さん「地域のための活動なので、今後も無料で開放を続けたいと思っています。

会社の状況によっては継続に影響が出ることもありますが、だからこそ会社経営をしっかり回し、地域のために頑張ろうという気持ちにもつながります。

これからも会社として成長しながら、より居心地のいいこども場所を続けていきたいです。」

DS Branchのこうした運営の工夫や考え方は、社会貢献と企業活動を両立させたい他の企業にとっても、今後の大きなヒントになりそうです。