高校生が主体となって運営する自習室
こども場所「まちの自習室」について
佐世保市中心部のビルにあるコミュニティスペース「on℃(オンド)」では、高校生が主体となって運営する「自習室開放イベント」が週3回、平日の放課後や休日に開かれています。窓の外には公園の緑が広がる、静かで心落ち着く環境です。
事前に公式LINEで登録・申し込みをすれば、高校生だけでなく、中学生から大学生まで誰でも利用できます。料金は平日200円、休日300円。学生が気軽に立ち寄れる、やさしい料金設定です。
利用者の声
実際に自習室を利用している高校3年生に、話を聞きました。「家だと集中できる場所がなく、学校での自習も時間に制限があります。カフェだと長居しづらくお金もかかるので、こうやって集中できる場所があるのがとてもありがたいです。受験まで引き続き利用したいです。」
「他の場所では、席がすぐに埋まってしまったり、使いたい時間と合わなかったりで、なかなか利用できずにいました。ここでは友だちと教え合うこともできるので勉強がはかどります。」
学生が安心して集中できる場所の、需要の高さが感じられます。
高校生の提案で生まれたこども場所
活動は2024年7月、高校3年生の生徒が「ここを自習室として使わせてほしいです」とon℃のイベントで提案したことから始まりました。 この一言を受けて、on℃は場所の提供と運営のバックアップをスタート。
提案した生徒は自ら運営リーダーとして活動しました。
卒業に伴い、次のリーダーを募集し、応募した佐世保北高校3年の松田笑実花(えみか)さんが、現在運営を担っています。
松田さん「学校の公式連絡ツールで募集を見て手を挙げました。
自信はなかったけれど、自分たちでイベントを運営する経験は、普通の学校生活ではなかなかできないので、思いきって挑戦しました。」
運営ではコミュニケーションを大切に。
松田さんをはじめとする高校生メンバーは、on℃運営者との連絡、申し込み受付、会場の清掃や施錠など運営全般を担当しています。
「利用の申し込みは、メッセージのやりとりから始まります。文字だけのコミュニケーションなので、歓迎の気持ちが伝わるように絵文字や、やわらかい言葉遣いを意識しています。来室時は『おかえり』と声をかけるのが定番で、初めて来た人もすぐに場になじんでくれます」と松田さんは話します。
「実は、ここに来るようになってから仲良くなったんです」 学校では接点のなかった生徒同士が、ここをきっかけに仲良くなることも多いそうです。
地域の大人、いろんな大人との接点ができた。
松田さん「学校や家庭以外で、地域の大人との関わりが持てたことも、学びになりました。
自分たちのアイデアや挑戦を受け止めて、形にしようと応援してくれる大人が地域にいることが、とても心強いです。
夏には学生同士が夢や進路について語り合える『進路相談』イベントを企画し、on℃の皆さんのサポートで、実現することができました。普段はなかなか話さない、それぞれの思いを聞くことができて、受験へのモチベーションも上がりました」。
「やってみたい」がはじまる
取材中、アイデアが形になる瞬間に立ち会いました。
「近くにお菓子や軽食が買える場所があったらいいな」と松田さんが話すと、「いいね、それなら松田さんがここで売ってみたら?」とon℃の大人たち。仕入れ費用はサポートするから、みんなが買いやすくて利益も出る方法を考えてみよう――と話がどんどん進み、松田さんは「楽しそう、やってみたい」とワクワク。
翌週には軽食コーナーが実現し、利用者の高校生たちからも好評だそうです。
いろんなこども場所として
on℃は、2024年3月から地元企業の有志で運営を始めたコミュニティスペースです。
「地域の大人が地域の若者を全力で育てる」を理念に、自習室開放のほか、学生主体のプロジェクト、地域交流イベント、こども食堂など、幅広い年齢の子どもたちが利用できる場所として活用されています。
石丸徹郎さん(on℃運営)「もともと就労支援施設だった、まちなかの特等席が、みんなのためのコミュニティスペースとして生まれ変わりました。」
西信好真さん(on℃運営)「地方で生まれたことで不利になる若者を減らしたい。大人は口を出さず、子どもたちの“やりたい”気持ちを尊重し、見守る姿勢を大切にしています。」
8社の地元企業が運営費を支援
自習室開放イベントは、運営メンバーの自主運営と、地域企業の支援によって支えられています。
現在は地元の8社が支援企業として月1万円から資金を出し合い、スペースの家賃や光熱費など、運営費の一部をまかなっています。
地域の支えがあることで、学生が気軽に利用できる料金でイベントを続けられています。
利用したい人へのメッセージ
松田さん「利用者は現在、校区の佐世保北高校3年生が中心ですが、他の学年や学校の生徒も気軽に使えるよう、情報を届けていきたいです。ほとんどの生徒が『もっと早く知りたかった』と言っています。まずは気軽に利用してみてほしいです。」
こんな支援を求めています!
①情報発信の支援
松田さん「運営も利用者も高校3年生中心なので、卒業までに後輩への引き継ぎが必要です。情報の拡散やサポートがもっと増えると助かります。」
②運営資金の支援
石丸さん「まちなかにあるので家賃の負担が大きく、支援だけではまかないきれない部分があります。今後もこの場所を維持し、まちを盛り上げるために、応援してくれる大人をさらに集めたいです。今後さらに入退室管理の改善や、男子トイレの洋式化など、具体的な支援も募っていきたいです。」
こども場所をやってみたい方へ
松田さん「自分たちで工夫して居心地のいい場を作るのはとても楽しく、地域の大人が見守ってくれるので安心です。こんな場が増えると、もっと多くの子どもたちが自分のやりたいことに挑戦できると思います。」
西信さん「子どもたちが安心して活動できる環境や、必要なサポートを整えることが大切だと思います。小さくても学びや挑戦を支える仕組みや場所をつくることで、地域全体が元気になっていくと信じています。
石丸さん「この自習室は、高校生たちの『やりたい!』という気持ちから始まった、私たち地域の大人にとっても大切な場所です。
これからも、学生たちと一緒にワイワイとアイデアを出し合いながら、みんながホッとできて、安心して夢を追いかけられる場所を、ずっと続けていきたいと思っています。
佐世保の未来を担う子どもたちが集う、この子ども場所を、地域みんなで守り育てていきたいです。」
- こども場所の名前
- on℃ 自習室開放イベント
- 住所
- 佐世保市湊町2-8 石井ビル2階(島瀬公園から徒歩3分)
- 開催日
- 週3回(要申込)
- 利用対象
- 中学生〜大学生
- 利用料金
- 平日200円/休日300円
- 運営
- 高校生運営メンバー、on℃の運営者
- 利用目的
- 自習・進路相談・仲間との交流
- 支援方法
- 地域企業による月1万円(1口)からの寄付











